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ななぶん第二号 感想

いちいち語尾に「~と読み取りました」「~というのが僕の見解です」とかつけるのは鬱陶しいので省いていますが、ようするにそういうことです。
さらに言えば、僕は同人誌というものについてはどんな人がその作品を書いたのかを重視している面があります(Twitterとか事前に見て表層的ですが大まかなイメージは掴んでいるということです)。
 
 
『愛すべき妹たちのセカイのために』
最初は雰囲気を重視した物語かと思ったのですが、実は徹底的に世界観を大事にした物語だったのです。世界観を主張している作品です。
 
まず、この作品では大きく分けて2つのもの、家族と現実というものが扱われています。そして最終的に、現実と家族は果たしてどういう関係にあるのか、ということを探っていく作品なのです。この点において論理的に書かれているように感じます。
 
僕にとって家族という概念は役割というものと密接に結びついており、それはつまり既にあるもの、自分に関係ないところで作られて強制的に与えられるものだということです。その意味で、家族は虚構であるという感覚を強く持っています。僕自身は、虚構ではあれどそんなに悪いものじゃないと感じるのですが、虚構であること自体が悪であるという考えを持つならばそれは破壊しなければなりません。この考えにおいては、生成される順番は現実、家族、自分であるからこそ虚構である可能性が生まれます。
 
一方、この作品で主張しているのは、まさに現実そのものが家族と同じものであるということ、少なくとも境界が同じであるものだということです。現実と家族と自分は同時に生成されるため、虚構であるという可能性はありません。この3つをひとまとめにして名前を付けるならば、それが「セカイ」ということになるのでしょう。
 
この考えにすぐ賛同できるかと言えば、そうとはいきませんが、新しい考え方を提示してくれたという点で非常に面白かったです。
 
本筋については以上ですが、この作品はところどころで遊び心や個性が発揮されていて、そういうった点も楽しみながら読めました。専門分野を持っているとそこから生まれる発想というものがあるんでしょうね。
 
 
 
『冬は置いてけぼりを嫌った話』
キャラクターの背景をくどくどと説明することなく、テーマ、書くべきシーンにすっと入っていけるというのは同人誌、特にテーマの定められたアンソロジーの強みだと感じます。
兄弟間において下の子というのは難しいもので、現時点での比較と年齢を考慮した比較との2重の比較に挟まれてコンプレックスを抱きやすいような気がしてなりません。基本的に家族の話の中で、一枚外部を噛ませているのが、とても良いと思いました。全体見渡すと実はまともに家族のお話している作品が少なかったりするのでこの作品が1番手として最適なんでしょうね。
 
 
 
『二人ぼっちのフェアリーテイル』
創作らしい創作というのでしょうか、話の展開の仕方がきれいでわかりやすいのです。こういうタイプの作品を書けるかどうかは人によってくっきり分かれてしまうのでしょうね。(小説を書いたことはありませんが)僕には生まれ変わらないと書けないものだと思いますし、読むという点でも生まれ変わらないと最大限楽しめないものなのだと思います。僕は多少ねじくれてしまっているところがあって、こういう作品に対しては憧れと諦めが入り混じったすこし複雑な感想を抱いてしまうのです。
 
 
 
『飛ぶ家族』
世界の作り方と言葉の使い方、リズム感が良く、一瞬で引き込まれてしまいます。どうやったらこんなに面白い小説が書けるのか……。
と、まぁ読み始めて最初のうちは、素敵な設定の中で素晴らしい言語的センスが炸裂しているところに目を奪われてしまうのですが、実は家族の書き方も特徴的で、(作品の中において)完全に平和的な形で閉じてしまっているのです。どこまで狙って作ったのかはわかりませんが、もしかするとこういう書き方しかできなかったのではないか、みたいなことは邪推ですね。
とにかく楽しい小説でした。
 
 
 
『world's end island』
読む前にユリ熊嵐だとか新世界よりに似ているみたいな話を耳にしましたが、確かに映像的には新世界より的で、やりたいこととしてはユリ熊嵐的だと感じました(僕はどちらもアニメを前半までくらいしか観ていませんので間違った印象かもしれませんが)。ただ最後にはみんなが魔臼になったということは単に「チュウ」の気持ちではなく一般的に強い感情の発露を表すのかなとか、魔臼同士で争っているというのは何を表しているのかなとか、妹の立ち回りとかがちょっと読み切れていないのでもしかしたらもっと根本的な読み違えをしているんじゃないかと思って不安になります。今もこれを書くためにパラパラ読み直すだけでボロボロ読み落としていたところが出てきてひやひやしています。
この作者さんはブログでいくつか小説を公開していますが、僕が一番好きなのは『鼠を殺す』です。ネズミさん大活躍ですね。(ちなみに次点は『ひとりごっこ』です)
 
 
 
『あたらしい家族たちのセカイのために』
これは『愛すべき妹たちのセカイのために』を読んでいなくてもうまく読めるものなんでしょうかね。本質的に家族をプレイヤーでありながら作り上げていくという姿勢が変わっていないので前作の感想とほぼ一緒かなという感じですね。どの次元においてもやることは変わらないという意味で、やっぱり存在の話じゃないか、ということにしたいです。
 
 
 
『ring our bell』
Twitterを見て、パワフルにねじくれた小説を書くのかと思っていましたが、割と繊細で実直なもので少し驚きました。
自分と他人が分かれているからこそそこで相互作用を起こすことができ、その中において永遠の生が成立する、というよりもそもそも生というものがそういうものである、といった感じなのでしょうか。僕は存在大好き人間なので基本的に存在ベースで考えてしまいますが、こういう考え方もありなのかなーと唸っています。
家族小説として実に正統、真っ当、王道であり、締めにふさわしいですね。
 
 
 
僕より確実に学のある人たちに自分の感想ぶつけていくというのは大変怖いことですね。ここまで書いてなお、お蔵入りさせようか悩んでしまいます。しかし、作品を読ませてもらった以上何か報いたいと思いますし、お世辞やねぎらいの言葉よりかは感想を書くことがより良いの報いだと思いますので、挨拶はほどほどにして、これで感謝の代わりとさせていただきます。