妄想の一丁目

 昨日やった天国の一丁目についていろいろ考えていたことを残しておく。本編とはほぼ関係がない妄想。

ゲームシステムのシナリオに対する干渉

 3面の最後、発せられた弾幕を避けるかどうかはそのままこの場所に留まるか現世に帰るかの二択に対応しており、話の展開に大きく影響する。しかしここまでシューティングゲームとして、弾幕は避けるものとして進めてきたプレイヤーにとってみればここでもやはり避けた結果到達するものの方が正しいエンドなのであり、避けるのに失敗した結果到達するエンドは間違ったものとなるだろう。それはそこまでの文脈の妥当性とはまた違った次元としてエンドに優劣をつける要素になる。

 プレイヤーにある種の選択を迫るゲームでは、時にプレイヤーの「ゲームであるからこそ」発生する無責任な振る舞いを指摘するような仕掛けが施されている場合があるらしい。自分はやったことがないので言及するのも気が引けるが、たとえば殺す必要のないキャラクターを殺したりだとか、恋愛ゲームにおいて2周目では違うキャラクターを攻略し始めたりだとか、そういう行為についてある種糾弾するかのような展開が用意されているとのことだ。自分の理解ではそのような仕掛けが導入される理由は「ゲームの世界(虚構の世界)に対して真剣に向き合っているか?」という疑問の投げかけをしているのだと思っている。

 翻って天国の一丁目について考えると、文脈の妥当性を顧みず「今まで避けるのが正解だったから最後でも避ける」とすることに対して、先の問いかけと同様な形としてその安易さを糾弾する仕掛けを入れたくなる。実際のところ現世に帰る選択をすることが妥当であると判断できるほどの文脈があるわけでもなく、どちらかというとヒロインの独善性が目立つ選択であるとすら思える。だからこれは天国の一丁目についての話ではなくて、ただの妄想。

キャラクターを地獄に落とす

 天国の一丁目をプレイしたときにはそこが地獄であるという深読みをした。結果的にそれは違っていたようだが、キャラクターを地獄行きとすることについて考えてみたい。地獄に落とすためにはなんらかの罪を犯していないといけないわけだが、それがあまりにも重い罪であるとプレイヤーからの心象が悪くなってしまう。ここは天国と地獄というモチーフであることも考えて、「自殺」というのが罪とするのが良いんじゃないかと思った。

 主人公が地獄へ来た理由が自殺ならば、ただ現世に帰しただけではやはり同様のことが繰り返され、再び地獄で相見えることになるだろう。ヒロインがルールを破った罰として消滅させられなかったとして、(そして天使は死者の死因がわからないとして)2回目に会った時点でその意味がわかるだろうか。事態はループ物の様相を呈してきている。2回目でわからずとも3回目、4回目と繰り返されれば、遅からず死因には考えが及ぶだろう。何も語らずとりあえず現世に返せばそれで良いとするヒロインの独善的な態度では何も救えやしないというところに気づいてから物語は始まる。そもそも主人公が自殺する理由はヒロインが地獄にいることを知っているからなのだ。

 ところでヒロインも地獄にいるからには、やはり罪を犯していなければならない気がする。主人公と同じ理由では芸がないが、他に理由も思いつかない。これは困った。困ったのでヒロインの罪は遡及的に定められたものとしよう。つまり主人公を何度も自殺させることになったことそれ自体が罪であり、その罪によって地獄にいることにする。それは時空がねじれていないかって? そんなのよくあることじゃないか。

 タイトルを回収する。主人公とヒロインが落ちた地獄は、しかし無間地獄ではないのであった。その地獄においてきちんと罪を清算することで天国へと昇っていく。主人公の罪は自殺であり、さらに言えば何度現世に戻ってもヒロインの気持ちを無視して何度でも地獄にやってくることである。ヒロインの罪は主人公の事情を顧みず何が何でも現世に返そうとするその態度自体と言える。これらが互いに向き合った真なる対話によって解消されるとき、ようやく二人は天国へいくことが許されるのだ。すなわち地獄は天国へ至る準備段階であり、さしずめ天国の一丁目、ということなのである(ちょっとこじつけ感があるか……)。

 最後に蛇足。これをゲームシステム的に再現するならば、最後のところだけプレイアブルキャラクターがヒロインになって、ヒロインvs主人公という形になりそう。主人公を打ち倒すと主人公は現世に帰るが、再びやってきて愕然とするエンド。打ち倒されれば二人ともこの場に残るが対話は行われず、この場が地獄であることが明かされ、二人は別々の場所でそれぞれに苦しむエンド。倒しも倒されもしないまま一定時間が経過するとセリフのやり取りが始まり、トゥルーエンド。こんなのいくらでも前例がありそうだなって思うのでボツです。終わり。