対抗形における性能

 前回、左右反転によるデータ拡張を導入し、初期局面からの対局では勝率にあまり差がないことがわかった。しかし以前の結果では、対抗形の学習は不十分であるという場合が見られた。左右反転を学習データに含めると、飛車が左にあるような局面がデータに含まれるようになることから、対抗形での性能が改善されている可能性は残されている。今回はそれの検証を行った。

 前回同様、四間飛車の基本図として「人気抜群の四間飛車を知る。まずは美濃囲いを作ってみよう!【はじめての戦法入門-第2回】|将棋コラム|日本将棋連盟」の第2図(下図)から対局を行った。

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 先手後手各125局ずつ行った結果が次となる。

局面 先手での勝率 後手での勝率 合計勝率
初期局面 72.8% (R:171.0) 74.4% (R:185.3) 73.6%
対抗形 34.4% (R:-112.1) 51.2% (R:8.3) 42.8%

 後手(居飛車)ではかろうじて50%を超えたが、それでも初期局面からの勝率よりはかなり下がっており、Eloレートで見ると180近く下がっている。先手(振飛車)になると、局面自体の不利さもあるのかもしれないが、Eloレート換算で300近く落ちている。相変わらず対抗形は全体的に苦手ということが言えそうだ。

 棋譜を調べると、居飛車の際、Miacisが穴熊に囲うことはなかった。全体的に急戦調の将棋が多く、きちんと囲うというよりは金銀が盛り上がるような展開が多かった。船囲い、elmo囲い、雁木囲いのようなものはときどき見られたが、よくわからない囲いになることが多数だった。

 学習中の棋譜を見てみても、ほとんどが相掛かり系統の将棋で中住まいがほとんどであり、飛車が左にあるというだけでは振飛車的な戦い方は学習できないのではないかと考えられる。以前の記事でも言及したように、やはり「囲い」を学習することができていない印象がある。

おまけ

 ちょうど対抗形だったので次の対局を解析してみた。

 上がMiacis、下がYaneuraOu/Kristallweizen(4Thread)で、どちらも1手5秒。

 ※Miacisは評価値を-1000 ~ 1000の値で出す。歩を単位にした値ではなく勝率に基づいた値であり、+1000して20で割ると先手から見た予測勝率となる。要するに20点が勝率1%ポイント分。例) +100点→先手から見た予測勝率55%

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 グラフの概形が似ているのでこの対局に関してはMiacisの評価もそこまでおかしいわけではなさそうだ。お互いに玉が不安定で5筋付近をフラフラする将棋だったのであまり苦手な展開ではなかったかもしれない。相穴熊の評価などがおかしくなりそうな気がするが、それについての評価はまた別の機会に。