コンピュータ将棋

左右反転によるデータ拡張

要約 左右反転によるデータ拡張を行うことで性能を落とさず学習速度を2倍にできた。 背景 囲碁では左右反転や回転などを利用してデータ拡張することができ、本家AlphaZeroでも の下の方にあるSupplementary Materialsに掲載されているFigure S1 において、同…

ここ2ヶ月の進捗

論文を書いているのもあってある程度情報を隠しながらやっていかないといけないかなと思っていた部分もあったのだけど、やはり性に合わない感じがしてきたので書きたいように書こうという方針で。正直なところ論文も公開しながら書きたいくらい……。 まずは前…

学習の再現性確認

最近はあまり新しい工夫を実装する時間がなく、とりあえず今の時点での学習に再現性があるかどうかを確認していた。 現状使えるマシンは、2080tiを2枚搭載しているものが1台、1080を2枚搭載しているものが2台となっている。実装上の都合によりマシン間でのデ…

MuZeroと脳内盤

技術的な内容というよりはやや曖昧な、(この言い方は好きではないが)ポエムっぽい文章を書いてみるなど。 今年の選手権でmerom氏には話した気がするのだけど、プログラム内部に盤面を保持してそれを遷移させて評価関数に入力するという方式は、継ぎ盤を用…

対抗形の学習が不十分

結論 現状の学習方法で得たパラメータは対抗形が苦手であり、学習局面として対抗形ほとんど出現していない。 背景 自己対局による強化学習だと学習局面が偏ってしまうのではないかという指摘は多々ある。Miacisについてはどうも対抗形で上手く指せていないよ…

適当にやった実験の結果

以下全てEloレートは全て技巧2(深さ10)と1手0.25秒で500局対戦した結果から推定したもの。 ディリクレノイズなし 行動選択を価値のソフトマックス関数にしたので、ある意味Policyに対する依存性が弱まり、ディリクレノイズを抜いても良いのではないかと思っ…

価値のソフトマックス分布を教師としたAlphaZero学習(最終結果)

要約 価値のソフトマックス分布を選択および教師に利用することでレートが150程度上がったが、これはMiacis特有の事情である可能性がある。 背景 前回、価値のソフトマックス分布を教師としたAlphaZero学習は少なくとも最初の方では学習が上手く進んでいるこ…

価値のソフトマックス分布を教師としたAlphaZero学習

要約 価値のソフトマックス分布を行動選択および教師分布として利用することで学習が2倍から3倍程度速くなった。 背景 前回、生成している棋譜を分析したところ、評価値を大きく損ねる悪い手が多く選ばれすぎていると感じられた。この原因として探索回数をも…

学習中に生成した棋譜の分析

要約 生成している学習データの質が悪い可能性がある。質を高めていくために(1)価値を考慮した行動選択 (2)の調整 (3)リプレイバッファサイズの調整 などを考えていきたい。 実験 前回1Mステップの学習を行ったが、まだ収束していないようにも思えたので2Mス…

思考時間とレートの関係

要約 Miacisではおおむね思考時間を2倍でレート+100となる。MCTSのスケール性もαβ探索と比べてあまり変わらないのではないか。 背景 AlphaZeroの論文(arXiv版)には1手の思考時間とレートの関係が図で表されている(Figure 2)。以下に将棋の方だけを切り抜いた…

長時間学習の結果/選手権以降にやったことのまとめ

要約 2週間弱かけて1Mステップの学習を行ったところレート2600程度になった。パラメータとWindows向けバイナリはGitHubで公開している。 背景 第29回世界コンピュータ将棋選手権以降、一通り試したいことはやったのでここで一度長時間の学習を行った。選手権…

優先度付き経験再生の実装・実験

要約 優先度付き経験再生はAlphaZero方式の学習でも効果がありそう。 背景 以前の記事でも軽く触れたが、優先度付き経験再生という手法がある。 大雑把に言うとリプレイバッファからのサンプリング確率を一様ランダムではなく優先度で重み付けするものである…

Sarsa-UCT(λ)の実装・実験

要約 Sarsa-UCT(λ)のλを調整しても明確な性能向上は見られなかった。 背景 以前の記事の通りMCTSにおける価値の漸進的更新を実装した。 これにより単なる平均を求める手法とは異なる手法へ改造することが容易になった。特に以前紹介したSarsa-UCT(λ)は自然な…

SENetの導入

要約 SENetの構造を導入することによってネットワークの性能が向上した。計算量はやや多くなるが、全体として棋力は向上した。 背景 山岡さんのブログで将棋ソフトでもSENetの構造が有用であるとの実験結果が示されていた。 このような簡単な変更かつ僅かな…

C_PUCTの調整

要約 は2.5としたとき一番性能が良かった。 背景 今までMiacisは探索の選択ステップにおいてScience版AlphaZeroと同様の係数を用いていた。 $$ a_t = \mathrm{argmax}_a \left( Q(s_t, a) + C(s) P(s, a) \frac{\sqrt{N(s)}}{1 + N(s, a)} \right) $$ $$ C(s…

MCTSにおける価値の漸進的更新

結論 MCTSの行動価値を漸進的に更新する実装で、総和を保持して平均化する実装と同程度の性能を達成できた。 背景 以前、MCTSにおいて行動価値を漸進的に更新する方法について記事を書いたが、性能が悪化してしまった。この記事で述べた通り、原因はおそらく…

Policyの教師信号を分布にする

要約 Policyの教師信号を探索回数の正規化した分布とした方が性能が向上した。 背景 AlphaZero型の学習においてPolicyの教師信号にはルートノードから各行動について探索した回数をその総和で割った分布を利用している。MiacisではCPUのメモリ容量が足りない…

バッチサイズとステップあたりの学習速度の関係〜強化学習編〜

結論 強化学習でもバッチサイズとステップあたりの学習速度は比例しそうだ。あるデータ生成速度に対して学習可能な範囲でバッチサイズを上げていくことが学習の高速化に繋がるかもしれない。 前書き 前回は教師あり学習において、バッチサイズとステップあた…

バッチサイズとステップあたりの学習速度の関係

要約 バッチサイズとステップあたりの学習速度は比例関係にある(?)ため、強化学習の高速化としてバッチサイズを小さくすることは意味がない可能性がある。 前書き 前回はLR Range Testによる学習率の決定法について書いた。これをもとに複数のバッチサイズ…

LR Range Testによる学習率の決定

要約 LR Range Testを行って損失が最小となるときの学習率を初期値として決定して良さそう。 前書き 山岡さんの『ディープラーニングによる将棋AIの作り方3』を読んでいて、floodgateの2017年、2018年の棋譜もhttp://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/x/から入手…

LibTorchにおける半精度浮動小数点演算

記事の要約 LibTorchを使って半精度浮動小数点演算(FP16)を行うことで探索は速くなったが、学習は上手くいかなかった。どうもBatch Normalizationの部分はFP32で計算しなければならないようだ。 LibTorchによる半精度浮動小数点演算 深層学習では厳密な精度…

持ち駒の正規化

記事の要約 持ち駒は正規化した方が良さそう。 前書き WCSC29会場にて山岡さんから『ディープラーニングを使った将棋AIの作り方3』を購入させていただいた。AlphaZero的な強化学習ということで大枠は変わらないが、読んでいるといくらかMiacisの実装と異なる…

バッチサイズと性能の関係

前書き AlphaZeroが4096という大きなバッチサイズで学習しているのに対して、Miacisは64という小さいバッチサイズでの学習を行っている。AlphaZeroに比べて使える計算資源が少ないためデータの生成速度が小さく、バッチサイズが大きいと同じデータを何度も学…

【WCSC29】個人的に興味を惹かれたアピール文書集

すでにuuunuuun氏が書かかれた全チームの簡単なまとめや、やねさんによる見どころ紹介がありますが、ここでは個人的に面白そうだなと思ったものについて妄想レベルの私見を交えながら触れていきたいと思います。自分がディープラーニング系のソフトを開発し…

追加学習による性能向上の検証

今までは再現性や比較の観点から毎回ランダム初期化したパラメータから学習を行っていたが、WCSC29も迫ってきたということで最も強いパラメータに追加学習することで性能が伸びるか検証を行った。 今まで最も性能が良いパラメータは評価値をカテゴリカル分布…

方策とディリクレノイズの比率を変更した学習

Miacisではメモリの関係上、指し手の教師信号として実際に指された手をOnehotベクトルとしたものを利用しており、そのためか方策が偏りやすい傾向にある。 AlphaZeroの学習アルゴリズムでは、各探索でルートノードにおいてディリクレノイズと元の方策の内分…

AlphaZeroに対するTDLeaf(λ)の適用 ~実験編~

前回はTDLeaf()の理屈からAlphaZeroにおいて探索した値を用いる方法を検討した。今回はそれを基に強化学習を行った結果を記す。 損失による評価 floodgate2016年・R2800以上同士の棋譜に対する損失計算によって評価を行った。 の3つの値について試してみたが…

AlphaZeroに対するTDLeaf(λ)の適用 ~準備編~

TDLeaf()の出典:Jonathan Baxter, Andrew Tridgell, Lex Weaver, "TDLeaf(lambda): Combining Temporal Difference Learning with Game-Tree Search," Proceedings of the Ninth Australian Conference on Neural Networks (ACNN'98), Brisbane QLD, Februar…

小さいバッチサイズに対する学習率設定

Miacisではバッチサイズ64で学習を行っている。GPUメモリが小さいのでバッチサイズを大きくできないためだが、Learnerが学習するデータ量とActorがデータを生成する量のバランスが重要なのではないかという根拠のない勘もある。 経験的にバッチサイズを変え…

行動価値の漸進的更新により性能が悪化する原因の考察

前回の記事ではMCTSにおける行動価値の更新を漸進的実装に変更したが、並列化した際に性能が悪化することがわかった。 MCTSの並列化方法として現在実装しているのはねね将棋、dlshogiで採用されているものと同様の方法である。1GPUにつきCPUが2スレッド稼働…